診療報酬改定
小泉総理の「骨太の方針2006」により、毎年2200億円の医療費歳出削減を行い、5年後の2011年には、1兆1千億円の削減を行う方針が進んでいますが、この間においても高齢化社会は進み、医療費削減どころではない状況が続いています。
そして、この医療費削減政策により、産科・救急医療・病院勤務医等の現場は疲弊し悲鳴をあげています。
医療機関等の収入に直結する診療報酬は、中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働大臣の諮問機関)で決められ、2年に一度改定されます。次の改定は、5ヵ月後の2010年4月で、これから改定にむけた協議が行われます。
今年8月に政権が変わり、10月26日に発表された中医協の選出委員に大きな動きがありました。
中医協の委員30人のうち、医師や歯科医師ら「診療側」委員は7人で構成されますが、これまでは、日本医師会(開業医中心、自民党支持者中心)推薦枠が3名あり、この3名の意見が診療報酬に大きく反映されていましたが、今回は日本医師会推薦枠は0名となり、代わりに茨城県医師会から1名、京都府医師会から1名、大学病院代表として山形大学医学部から1名選出されました。
長妻厚生労働大臣は、「どこの医者も苦労して、疲弊している」「日医外しの意図はなく、大都市と地方。東日本と西日本。バランスに配慮した。」「選挙うんぬんは関係ない」と述べていますが、茨城県医師会・京都府医師会はともに、先の総選挙で民主党を支持しており、日医側は、「明らかな報復人事」と猛反発しています。
中医協「診療側」の委員7人は次のとおりです。
白川修二 : 健康保険組合連合会常務理事
中島圭子 : 連合総合政策局長
安達秀樹 : 京都府医師会副会長
嘉山孝正 : 山形大学医学部長
鈴木邦彦 : 茨城県医師会理事
三浦洋嗣 : 日本薬剤師会理事
北村善明 : 日本放射線技師会長
民主党マニフェストの医療に係る具体策には、「自公政権が続けてきた社会保障費2200億円の削減方針は撤回する。」「医師・看護師・その他の医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額する。」「OECD平均の人口当たり医師数を目指し、医師養成数を1.5倍にする。」「国立大学付属病院などを再建するため、病院運営交付金を従来水準へ回復する。」「救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建するため、地域医療計画を抜本的に見直し、支援を行う。」「妊婦、患者、医療者がともに安心して出産、治療に臨めるように、無過失補償制度を全分野に広げ、公的制度として設立する。」と記載されています。
新政権は、予算全体の削減に努めており、それは医療費も例外ではありません。医療費の予算(パイ)を増やさずに、予算の重点配分(診療報酬を上げる)を行おうとすると、どこかを削らざるを得ません。
これから診療費改定に向けて、医科・歯科・薬価等の診療報酬改定の協議(パイの奪い合い)、そして医科のなかで、各科、開業医と病院勤務医の間でも診療報酬改定の協議(パイの奪い合い)が始まります。
ちなみに、平成19年の医療費総額約34兆円の内訳は、次のとおりです。
病院 18.0 兆円
診療所 8.0 兆円
歯科 2.5 兆円
薬価 5.5 兆円
「医療」は、「安心な暮らし」の要(かなめ)です。
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