本日、今年度最後(第8回)の琵琶湖塾がピアザ淡海で開催されました。今回のゲスト講師は、アメリカ外交・日米関係が専門の同志社大学法学部政治学科教授の村田晃嗣氏でした。田原総一朗塾長から、「村田さんは、日米関係が非常に詳しい、日本で一番だと私は思っています。」という紹介のあと講演をされました、内容は次のとおりです。(誤りがあるかもしれません)
2010年の1年間に限定して、まずお話します。昨年1月20日にオバマ氏が演説をしました。オバマはアメリカで初めての黒人大統領というのではなく、初めての非白人大統領というべきだと思います。21世紀中にアメリカで、ヒスパニック系の大統領、そして、アジアンの大統領が生まれると思います。アジアン大統領は、おそらくジャパニーズではない、チャイニーズだと思う、我々が生きている間に実現するかどうかわかりませんが、21世紀中に誕生すると思います。2050年には、アメリカにおける白人は50%をきる、白人がマジョリティではなくなり、最大のマイノリティになる。
オバマ大統領就任当時、7割の支持率があった。しかし、10月に失業率が初めて10%を越え、その時点で支持率は43%になった。我が国鳩山内閣の支持率も、出発時7割を超えていた。7月の参議院選挙時に何割の支持率があるか、参議院の結果が重要。日本もアメリカも、ともに内政が外交に大きく影響する。
2010年は日米安保50周年です。中曽根氏は鳩山氏のことをソフトクリームみたいだと言った。オバマは日本での演説をもじって抹茶アイスクリームのようだと言われている。どちらもふわふわしていて、実体がなくイメージが先行している。今年11月にオバマは、APEC(アジア太平洋経済協力)があるために、日本(議長国)に来る。その時に、日米両国政府は記念共同宣言をだす、その共同宣言に実体が伴っているか、その時点で基地問題がどのようになっているか。本来、大きな日米同盟の話し合いをしてから各論について話し合うべきであったが、基地問題という各論から話が始まってしまい、それがこじれてしまった、それが非常に残念。
日本には、日米関係の重要性を述べる専門家はたくさんいるが、ワシントンに日米関係の重要性を訴える専門家は、多くても30人まで。今回の基地問題は、それらの30人の方を非常に傷つけた、そのことが今後、大きな影響を与える、それが非常に残念。
ジャパンアズナンバーワンという本が1979年に書かれた。今年中に日本は中国に抜かれてGDP世界ナンバー3になる。2020年には、中国は日本の2倍のGDPになり、日本はインドに抜かれて世界ナンバー4になる。2050年には、日本の人口は1億人を割る、労働人口が2割減ると、GDPは半分になる。2050年に、日本の人口は1億3千万から1億になるが、アメリカは3億人から4億人になっている。
日米中の3国の中で日本が最も強かったのは1989年。この年に中国では天安門事件が起き、ベルリンの壁が壊れた、1989年暮れに日経平均株価が史上最高値をつけた。国際政治は、軍事力・経済力・価値局面が複雑にからみあっている。1989年、瞬間的に日本が優位にたった、しかし、その後20年間どんどん衰えている。
米中関係においては、アメリカが台湾に大口の武器を輸出している。通常なら、アメリカと中国の関係はギクシャクするが、しない。理由は、台湾は中国に完全にとりこまれて安定しているから。
日本の内政については、野党第一党がどこまで立ち直れるか、しっかりとした2大政党制をつくれるかどうか。自民党は脳梗塞を起こして倒れた、民主党が脳梗塞を起こさないか心配。米ソの冷戦関係において、日本では社会党に投票したらアメリカとの関係が悪化する、だから自民党を応援しようという意識があった。冷戦構造・高度成長・中選挙区の3つがすべてなくなり、自民党は倒れた。先の総選挙で民主党は、100人以上の新人が当選した。4年後、8年後、それらの人が各選挙区から立候補すると、優秀な若い人材が立候補できない状態となる。そうなると、民主党も脳梗塞を起こす。
では、日本は今後どうすれば良いか。面積・人口・天然資源は変えることができない、物質的には変えられない。イメージ・価値観は植えつけることができる。今、80年代に日本が経験したことを中国が経験している。阪神淡路大震災以降、15年間日本はGDPがずっと横ばい、先進国で唯一、伸びずに横ばいが続いている。80年代の日本はたしかに強かったが、将来は自分がひっぱるというイメージを起こさせなかった。今の中国は、今後の世界をひっぱるのは、中国だというイメージを与えている。今の中国の状態は、経済的には日本の80年代(経済発展)、環境問題は日本の60年代(公害問題)、軍事問題は日本の30年代(軍国主義)、をたどっている。日本はイメージを発信することが重要、アメリカがけしからん、というなら英語でアメリカを論破しなければいけない。アメリカはけしからんと日本国内で言っても意味がない、英語でアメリカを論破しなければいけない。
村田氏の講演の後、ディスカッションになりました。
田原氏「中国は、将来は我にあり、という自信を持っている。日本はまったく持っていない、日本はどうすれば良いか?」
村田氏「中国もいずれ人口学的には高齢化が始まる。中国には日本のような社会保障がない、日本以上に大規模な高齢化が始まれば中国ではとんでもない状況になるかもしれない。」
受講者「日本はアメリカを怖れていると言われているが、アメリカの何を怖れているのか?アメリカは日本をどうしたいのか?」
村田氏「アメリカも日本も意見は一つではない、アメリカでも日本をこうしたいという議論が100も200もある。アメリカの言いなりが悪いのかどうか。日本がしたいこととアメリカがこうしたいということが合致した場合、これをアメリカの言いなりというのかどうか。中国・韓国・北朝鮮は変数が大きい、その中でアメリカは日本に、一番変数が少ない定数でいてほしい、と思っている。」
田原氏「アメリカ・中国・ヨーロッパは覇権国になろうとしているが、日本はその意識がまったくない。これは良いことか悪いことか?竹島問題(韓国)、尖閣諸島問題(中国)ともに日本は全然発信しないが?」
村田氏「日本が領土問題で解決できたのはアメリカとだけ、沖縄と小笠原諸島だけ、それ以外は何も解決していない。」「オバマは広島に行きたい、在任中に来る可能性はまだある。アメリカでは、アメリカ大統領が日本に行ったら、日本は何をしてくれるか、ということを考えている。外交は、ギブ&テイク。オバマ大統領に原爆投下について謝罪を求めたら広島には行けない、お花を添えるだけで良い。」
受講者「日米同盟はどうなるのか?日米同盟はどうしたら良いでしょうか?」
村田氏「まず関心を持つことが重要。批判するにしても賛成するにしても、まず関心を持つこと、次に知識を持つことです。そうしないと、考えて判断することはできない。」
終了の10分程前に、嘉田知事が飛び入りで参加されました。
嘉田知事「予算編成の時期で、この時間だけの参加になってしまいました。」「1970年代に、アメリカに3年間留学していました。3年間外国の情報が全然入ってこなかった、新聞に日本の記事が載らなかった。今は良くなった、情報が飛び交っている。少し英語を勉強して、世界中に情報を発信してほしい。」「『探検・発見・ほっとけん(行動する)』をキャッチフレーズに子供達と行動している、答えのない事を自ら考えることが重要。」
田原氏「小学校・中学校・高校、日本の教育は間違っている、答えがある問題しか解かせない。答えのない問題を考えて、自分の考えを人にぶつける、そして相手から返ってきたら、また考える。これが大切。」
嘉田知事「琵琶湖塾は、滋賀県が予算を組んで始めた。しかし厳しい財政状況で、今は県立大学とボランティアで、この琵琶湖塾が成り立っている。先ほど、原口総務大臣が滋賀県に地方交付税の予算を付けてくれた。これでやっと県の事業ができる、教育にも力をいれたい。」
田原氏「来年度も琵琶湖塾を7月から開催します、期待してください。答えのない問題をいっしょに考えましょう。」